ゐねむりゑびす

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七福神は他の世界中の神様たちと違って底抜けに明るい。微笑んでいる神様は多いが、大笑いしているのは珍しい。昔の日本人はこんなにおおらかだったんだなあ。みんな仲良く宝船に乗って楽しそう。七福神の中で唯一の日本の神様がゑびす様だ。今釣ってきたけど一緒に食べよう、と手も服もベトベトにしながら生の鯛を持っているのが嬉しい。お酒はボクが用意しましょう。耳が不自由だ、という欠点があるのもかえって親しみがある。
「ゑべっさんは耳が遠いから裏手にあるドラを鳴らして起こしてからお 
祈りするんや」

でもボクは、ゑびす様は寝ているんだと思う。あのおおざっぱな性格からして耳が遠いよりも居眠りをしているほうが似合っている。だから眠りから叩き起こして願いを聞いてもらうほうがいい。ひとつの願いを聞いてはこっくり、またひとつの願いを聞いてはこっくり。聞いてもらうだけだ。叶えるのは自分で。でも聞いてもらっただけで、満足な気持ちになれる。ボクはゑびす様が大好きだ。

1月10日の夜、大阪の今宮ゑびすに行ってきた。十日ゑびすは初詣とは別物で、純粋に商売繁盛を願うためのものらしい。ボクは夜にしか行ったことがないが、ここの境内は暗闇の中に浮かぶ黄金ドームだ。
宝船の中だ。「商売繁盛、笹持って来い」とエンドレステープが呪文のように流れる中、小銭が宙を飛ぶ。財布も飛んでいる。大判小判が笹の小枝で光ってる。福娘が笑ってる。誰も彼もがゑびす顔。おみくじは大吉だ。揺れる揺れる、宝船が揺れる。でもゑびす様は鼻提灯でこっくりこっくり眠ってる。


 

宇宙について

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草むらで休む巨人が大きく大きく息を吸って、ゆっくりとゆっくりと息を吐く。このひと一呼吸をボクたちは永遠と呼び、この時の巨人の口の中を宇宙と呼ぶのだと、ずいぶん幼い頃からそう思い、今もまだそう思っている。何百兆年も生きるその巨人にとって、宇宙や地球そして人類の誕生が自分の口の中で起こり、そして終焉するということなど無に等しい。次のひと一呼吸でも同じように宇宙の誕生と終焉があるのだから、そんなことを考えるだけでも煩わしいに違いない。ボクたちはそんなちっぽけな存在だ。でもボクはその巨人の存在を頭の中の宇宙で想像することができる。宇宙とはどこにあるのだろう。

空を見上げて、ああ、あの空の彼方には巨人の上アゴがあるのだなと思うのだが、最近、待てよ、ボクの口の中にも宇宙があって、そこにはたくさんの宇宙人の営みがあるのではないかと考えるようになった。そう思うと、しばらく息を止めて「その宇宙」の延命に協力したりするのだが、ゼーゼー言って、その次の宇宙が短命に終わってしまったりする。

偉い学者は「酸素がないから宇宙人は存在できない」と言うが、それはあまりにも視野が狭いのでは、と素人のボクは思う。宇宙人は「あの猛毒の酸素を吸って生きているヤツがいる」とボクたちのことを驚きと軽蔑を持って観察しているかもしれない。

だいたい宇宙人は人間と同じ大きさだという考えがエゴだ。たとえばオリオン座のM78星雲には身長50メートル前後のウルトラマンが存在すると考えるのが限界で、身長が10キロもあったり、逆に1ミクロンしかないような宇宙人については考えない。特にちいさいと軽視して、細菌あつかいだ。

しかし待てよ、人間が地球人なんて誰が決めたんだ。火星にはナノ単位の火星人がいて、彼らはすでにゴキブリを地球人と認定し、交流している可能性だってあるのに。

 

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