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title: 【第12話】鳩
description: "セイノーロジックス前社長、渡辺景吾が、時評、世風、個人の回想、命などをテーマに自由奔放に書き記したエッセイ「ゐねむりゑびす」 

著／渡辺景吾"
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[コーヒーブレイク｜セイノーロジックス株式会社 ](https://www.logix.co.jp/coffeebreak)

# [【第12話】鳩](https://www.logix.co.jp/coffeebreak/202301031)

 作成者: [セイノーロジックス株式会社](https://www.logix.co.jp/coffeebreak/author/セイノーロジックス株式会社)｜2023.10.31

*～ セイノーロジックス創業社長、渡辺景吾が執筆したエッセイ「ゐねむりゑびす」から ～*

中学一年の時、親友のＨ君に一羽のハトをもらった。モザイク模様の美しいハトだった。Ｈ君にはジュウシマツのつがいをもらって増やしたこともあった。でも彼の家に遊びに行って大きな鳩小屋を見たら、もうジュウシマツなんか子供だましに思えてしまった。そして頼み込んで、一羽わけてもらったのだ。

母親は怒ってそのハトを返してこいと言った。ボクがＨ君から無理矢理押し付けられたようなウソをついたからだ。申し訳ないことに、彼はボクの母親にさんざん嫌味を言われたが、ボクが頼んだことなど一言も言わずに黙って下を向いていた。そのうち怒り疲れた母親が「仕方ないわね」と折れて、ボクはようやくそのハトを飼うこととなった。

「ひと月ぐらいたったら放してごらん。上空をグルッと回って戻ってくるよ」Ｈ君にそう言われて、ボクはひと月待った。長い長いひと月だった。その日曜日の朝、ふとボクの心に疑念が湧いた。このハトは戻ってこないかもしれない……。

ボクはハトの足に長いヒモを結んだ。そしてヒモの端をギュッと握ったまま、ハトを放した。ハトは上昇して隣の家の屋根を超えそうになった。しかし途中でヒモに足を引っ張られて急降下してきた。ボクは慌ててヒモを放した。体勢を立て直したハトはちらりとボクを見た。哀れむような優しい目だった。そして十メートルのヒモをつけたままハトは飛び去った。戻って来なかった。

２、３日たって、ヒモでグルグル巻きになった血だらけのハトがＨ君の家の鳩小屋に戻った。ボクは自分がとても悪い人間に思えて泣いた。ハトを信じられなかった自分を恥じた。Ｈ君はその時も、今も一度もこの話をしない。ハトが彼の家に戻ったのは当たり前だ。

あの時、ちらりとボクを見たハトの目が菩薩のようで、今でも忘れられない。

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