コーヒーブレイク|セイノーロジックス株式会社

【第13話】かかと落とし

作成者: セイノーロジックス株式会社|2023.12.06

~ セイノーロジックス前社長、渡辺景吾が執筆したエッセイ「ゐねむりゑびす」から ~


この頃、天井の電球を取り替えるのがきつい。不安定なイスの上で、ずっと上を向いてクルクル電球を回していると強烈な肩こりになったように腕が重くなる。五十肩をやってからますますその傾向が強くなった。そのうち電球がひとつ切れたぐらいでは取り替えなくなってしまった。少なくてもふたつ切れるまでは取り替えないので廊下が真っ暗のことがよくある。なぜか小さい頃から電球交換はボクの仕事だ。長期出張から戻って、薄暗い中で家族のうらめしそうな目が光っていたりすると、カバンから洗濯物を取り出すより先に電球の交換だ。こんな時、家族にとって、ボクが無事戻って来た喜びよりも、間違いなく部屋が明るくなった喜びの方が大きい。

先日5つぐらいの電球をいっぺんに取り替えていたら、途中から切れている電球と新しい電球がゴチャゴチャになってしまった。腕は痛いし、頭に血はのぼるし、パニックになってしまった。そこに他人の傷口に塩を塗り込むのが大好きなボクの母親が現れて、妻子ある50過ぎの男に向かって「そんな馬鹿な子供は生んだ覚えがない」などと言うので、大人げないが、イスの上からアンディ・フグ並みのかかと落としを入れてやった。