2022.02.10

【徹底解説】海外で人気沸騰!日本酒の輸出手続きと相手国別の注意点

近年では日本食が海外で力強いブームを巻き起こし、日本食に合う日本酒も脚光を浴びています。海外では日本食レストランや日本酒を扱うショップが増加中です。

アメリカや中国、台湾、香港ほか、ヨーロッパ諸国も含めて多くの国が、日本酒の新たな市場といえるでしょう。この記事では酒類の流通に携わる皆様に、日本酒を輸出するための基本知識をわかりやすく解説します。

今後日本酒の輸出を検討する際の、参考にしてください。
本記事の内容は一般的な情報を取りまとめたものであり、状況によって異なる場合がございます。また、弊社サービスではない部分もご紹介しておりますこと、あらかじめご了承ください。

 

日本酒を輸出する手続きと流れ

まずは日本酒を輸出する際の大まかな手続きと、その流れを理解しましょう。日本酒などの酒類を含め、基本的に貨物を輸出する際は同様の流れで進んでいきます。

なお、ケースバイケースでプロセスが省略されることや順序が前後することもございます。それでも大まかな流れを認識しておけば、不安になることなく手続きを進めることができます。

 

Phase.1:フォワーダー様に依頼

まずは国際輸送の手配や手続きを一括で請け負うフォワーダー様に連絡し、見積りを取りましょう。「フォワーダー」とは国土交通大臣の認可を受け、貨物利用運送事業法に基づき国際輸送を扱う貨物利用運送事業者で、貨物代理店とも呼ばれます。

フォワーダー様に委託することで、複雑かつ専門性の高い国際物流のプロセスがスムーズに進行するでしょう。

ちなみに「フォワーダー」と混同されがちな業者が、海運貨物取扱業者または海貨業者です。国土交通大臣の許可を受け、港湾運送事業法に基づき港湾で海運貨物の船積みや荷下ろし、国内での運送手配を取り扱う業者を指します。

 

国際物流は船会社や航空会社とのブッキングや関係書類の作成、関係省庁への許可申請、梱包など多くの準備が必要です。通関手続きおよび輸送先国での輸送の手配があり、専門知識も求められます。

 

そのため、貿易実務の経験がない個人や企業が独力で行えば、時間も手間も非常に掛かるので、かえって非効率になりがちです。フォワーダー様に任せるとネットワークを活用してコストを抑えたり、輸送のスピードを調整したりできる柔軟さが得られます。

見積もりを取る際には、フォワーダー様に以下のような輸送条件を伝えましょう。


●貨物の内容
●仕向地
●数量あるいは重量、容積

 

見積もりが出たら費用だけでなく、要するリードタイムなどを考慮して判断し、依頼しましょう。

 

Phase.2:品質保持可能な梱包

トラックの輸送とは異なり、海上もしくは空中の輸送なので大きな揺れに耐えられるだけの丈夫な梱包が必要です。

また、日本酒は温度および湿度の管理が品質保持のために重要になります。そのため、リーファーコンテナと呼ばれる、一定の温度管理ができる冷凍・冷蔵コンテナを利用するのがよいでしょう。

Phase.3:保税地域に搬入

通関書類が揃い梱包を完了したら保税地域に搬入します。これは税関が管轄する、外国から届いた貨物や、これから輸送される貨物を荷捌きする上屋です。

複数の荷主で同じコンテナを共有する場合には、コンテナ・フレート・ステーション(CFS)という上屋に一旦搬入され、効率よくコンテナに詰め込まれます。

単独の荷主で1つのコンテナを利用する場合は、酒類を荷主の倉庫でコンテナに詰め込んでから、直接コンテナヤード(CY)に搬入するパターンです。

Phase.4:輸出通関手続き

コンテナが保税地域に搬入されると、輸出通関手続きが開始されます。日本から国外に貨物を輸出する場合には、税関においてこの輸出通関手続きが必要です。インボイスやパッキングリスト(後述)などが必要となります。

通関手続きは輸出貿易管理令や関税関係法令、食品衛生法などさまざまな法律が関係する作業です。税関への交渉および立ち合い業務もあり、簡単なことではありません。

それを荷主自身が行うのは、不可能ではないにせよ難易度が高く、大変煩雑な作業となります。時間と手間を考えればコストを割いてフォワーダー様もしくは通関業務専門の通関業者様に代行を委託するのが得策です。

「通関業者」とは財務大臣の許可を受け、通関業法に基づき他者の通関手続きを受託する業者を指します。ちなみに自ら自分個人や自社の通関手続きを行う場合には、許可は必要ありません。

フォワーダー様もしくは通関業者様に委託すれば、荷主は税関に出向く必要がありません。輸出申告書類の作成と申告、および税関交渉や貨物検査立ち合いなど、輸出に関する法律面をクリアする作業を代行してくれるので安心です。

税関から輸出許可が無事に下りれば、輸出許可書が発行され、対象の酒類は国外に向けて「外国貨物」扱いで輸出できるようになります。

Phase.5:出港

輸出許可が下りた貨物は、海運の場合は船会社様から船荷証券(B/L:Bill of Lading)が発行されます。

そして、コンテナに積み込まれた酒類は、天候に問題がなければ現地に向けて出発です。

ちなみに、船荷証券は貨物請求権を証券化したもので流通性がありますので大事に保管してください。一方、航空貨物運送状は預かり証以上の意味はありません。それでも、着荷して荷受人の手に渡るのが確認できるまでは保管しておきましょう。

Phase.6:現地到着

酒類の貨物を積んだコンテナは、海外の港もしくは空港に到着すると、まず現地の保税地域に搬入されます。日本からきた貨物は現地から見て「外国貨物」なので、現地での受け取りは、必要な検査や審査、税金徴収が済んでからです。

Phase.7:輸入申告

貨物が保税地域に搬入されると、現地のビジネスパートナー様もしくはその依頼を受けた通関代行業者様が輸入(納税)申告を行います。

輸入申告の際に、インボイスやパッキングリスト、船荷証券や航空貨物運送状、貨物保険を掛けているなら保険証券の、それぞれのコピーが必要です。対象の書類を現地のビジネスパートナー様にメールかFAXであらかじめ送付しておきましょう。

Phase.8:現地にて流通

税関での一連の手続きが終わり、輸入許可が無事に下りれば、晴れて酒類を現地で受け取ることができます。

その際にはトラックの手配、あるいはドレージ輸送(港で荷降ろしせずにコンテナごと目的地まで陸上で運ぶ輸送方法)の手配が必要です。その手配はフォワーダー様に代行してもらうこともできますが、荷主様や荷受人様が手配することもできます。

これが日本酒を輸出する際の、一般的な手続きと流れです。現場では細かいことがいろいろとありますが、フォワーダー様に依頼するのであれば、荷主様としては大まかな全体像を理解しておけばよいでしょう。

日本酒を輸出する際の注意点

日本酒を輸出する際には注意すべきポイントがいろいろとあります。主に「免税」「輸出相手」「危険物扱いになるもの」「ライセンス」「必要書類」について、認識しておくべき情報を解説しましょう。

酒類の輸出は免税される

酒類の製造者様が自ら輸出する場合、あるいは製造者様から直接酒類を仕入れて輸出する場合にかぎり、酒税納税申告書を税務署に提出すれば酒税が免税されます。
次の条件を満たすことが必要です。

● 酒税納税申告書の期限内での申告であること
● 酒税納税申告書に数量や税率区分などが記載された明細書を添付すること

詳細は税務署内の酒類指導官に確認しましょう。

輸出先のビジネスパートナー様の見つけ方

海外で日本酒を輸入するビジネスパートナー様を見つけるには、展示会や商談会、見本市などのイベントに出展業者として参加する方法がおすすめです。

それらのイベントを活用すれば、自ら海外に赴いて営業する手間も時間もコストも必要ありません。ピンポイントで日本酒に関心を持つバイヤー様にコンタクトできる、絶好の機会です。

バイヤー様に試飲をしてもらってコメントをその場でもらえるので、改良や差別化のヒントが得られるメリットもあります。もちろん、先方が気に入ってくれれば、その場で契約の話に進むことも可能です。

2020年7月には国税庁、JETRO、JFOODO、クールジャパン機構、全国卸売酒販組合中央会を運営主体として日本産酒類輸出促進コンソーシアムが始動しました。

新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、対面式によるセミナー&商談会から、オンラインに切り替えて開催を続けています。2021年2月2日に第12回の申込みが終了しましたが、第13回まで予定されています。

コロナ禍によって各国での展示会が中止や延期となり、海外へマーケット開拓の機会を逸していることから、インターネットを介して海外のバイヤー様と商談ができる、絶好の機会として活用されています。

危険品扱いになる酒類とは?

アルコール度数が24%を超え、かつ容量が250リットルを超える容器で輸送する場合や、アルコール度数が70%を超える場合には、引火性液体として国際輸送法上の危険物扱いになり、輸送料が割高になったり、提出書類が増えたりする場合があります。 

危険物の輸出を扱わないフォワーダー様もいるので、見積もり時に確認しておきましょう。

酒類輸出のためのライセンス

酒類を輸出するには、輸出入酒類卸売業免許の取得が必要です。また、申請の時点で、輸出先のビジネスパートナー様を確保していることが条件となります。

輸出入酒類卸売業免許とは酒類卸売業免許の8区分のひとつです。自身が輸出もしくは輸入する酒類を卸売するために必要となります。

ちなみに酒類製造者様が自ら製造した酒類を自ら輸出する場合には、免許は必要ありません。また、インターネットを通じて酒類の小売販売を行う場合には、通信販売酒類小売業免許の取得が必要です。

輸出入酒類卸売業免許の要件は?

輸出入酒類卸売業免許を取得するためには、以下の3項目でそれぞれ満たすべき要件があります。

● 人的要件
● 場所的要件
● 経営基礎要件

個別に見ていきましょう。

人的要件

販売をする個人および法人の役員が、事業免許の取消や刑事罰を受けていないかが問われます。主な項目は以下のとおりです。

● 過去に酒税法の免許やアルコール事業法の許可を取り消されたことがない
● 3年以内に国税または地方税の法令に違反して罰金刑や通告処分を受けていない
● 3年以内に刑法や未成年者飲酒禁止法や風俗営業等適正化法で罰金刑を受けていない
● 3年以内に禁錮以上の刑の執行を受けたり服役したりしていない
● 2年内に国税または地方税の滞納処分を受けていない

場所的要件

場所的要件は主に以下のとおりです。小売や製造者の要素も含めて示されており、解釈が難しい面があります。

● 受注などの営業および事務手続きを行うことができる事務所がある
● 酒類の製造場所と販売場と料理店は別の場所にある
● 酒類の販売場やレジ、販売担当者などがほかの営業と区分されている

経営基礎要件

経営基礎要件は申請者の知識および能力の要件と財務的な要件があります。
まず、申請者の知識および能力の主な項目は以下のとおりです。

● 破産者ではない
● 経験などから酒類卸売業を適正に経営するに足る知識や能力を持っていると判断できる
ただし、酒類販売の実務経験の有無は問われません。
次に、財務的な要件の主な項目は以下のとおりです。
● 過去3事業年度の各決算において資本金の20%以上の損失が発生していない
● 国税または地方税を滞納していない
● 酒税に関係のある法令違反による通告処分を受けたことがない
● 最終事業年度の決算で繰越損失が「資本等の額」(※参照)を上回っていない
● 1年以内に銀行取引停止処分を受けていない
● 都市計画法や建築基準法などの違反による店舗の除去を命じられたことがない
● 事業用の設備が用意されている、もしくは用意する資金を持っている
※資本等の額=(資本金+資本剰余金+利益剰余金)-繰越利益剰余金

輸出入酒類卸売業免許申請の流れ

輸出入酒類卸売業免許を申請する流れは以下のとおりです。

Step.1:免許要件をクリアしているかを確認する
Step.2:申請に必要な書類を確認して用意する
Step.3:申請書類を作成する
Step.4:完成した申請書類を税務署に提出する

審査はおよそ2ヶ月掛けて行われます。
審査期間中に書類に不備があればその連絡や修正の指示、内容の確認、追加書類の依頼などがあることも珍しくありません。不備を修正および補正している期間は審査が止まるので、連絡があれば速やかに対応しましょう。

場合によっては、税務署の酒類指導官が訪れて現地確認を行うことがあります。申請書の内容通りか、あるいは申請書だけでは明確にならない箇所の確認をするためです。

審査が完了して問題がなければ、免許通知書交付日の日程が調整され、交付となります。酒類指導官は全自治体に常駐しているわけではなく、巡回しているので免許通知書の交付日は、その巡回の日程に合わせることが多いです。

コロナ禍の影響により、地域によっては郵送で手続きを行うこともありますが、基本的には税務署においての手続きになります。

交付日は税務署で登録免許税の納付を行い、免許通知書の交付を受け、注意事項の説明を受けて完了です。免許通知書が交付されたら、その時点から酒類の輸出を開始できます。

酒類輸出のための必要書類

酒類を実際に輸出する際に必要な書類は、以下のとおりです。

● インボイス(Invoice)
● パッキングリスト(Packing List)
● シッピングインストラクション(Shipping Instruction)

これらの書類は、酒類にかぎらず貨物を輸出する上で必要になります。それぞれを見ていきましょう。

インボイス(Invoice)

インボイスは仕入書もしくは商業送り状とも呼ばれる、輸出者様が輸入者様に対して発行する書類です。通関手続きにおいて、税関に提出する必要があります。

インボイスに記載されるのは、輸出入者名や品名とその数量、価格、契約条件、仕向地などの関税法で定められた項目です。

パッキングリスト(P/L:Packing List)

パッキングリストは梱包明細書とも呼ばれる、貨物の個数や重量、容積などを記載する書類です。通関手続きに必要ではありませんが、慣例的に提出を求められます。インボイスとセットで作成しておきましょう。

シッピングインストラクション(S/I:Shipping Instruction)

シッピングインストラクションは船積依頼書もしくは船積指図書とも呼ばれ、フォワーダーに輸送を依頼する際に作成する書類です。これをもとに、船会社なら船荷証券、航空会社なら航空貨物運送状が発行されます。

ちなみに輸出申告書は、フォワーダーや通関業者が作成を代行してくれます。しかし、インボイスとパッキングリスト、シッピングインストラクションは荷主が作成しなければなりませんので、気をつけてください。

委任状

委任状とは、通関業者に初めて通関手続きの代行を委託する際に作成する書類です。通関業法によって荷主は委任状の発行を義務付けられています。簡易的な書類で、作成は難しくありません。

酒類輸出で証明書が必要な場合

海外では2011年3月の東日本大震災の影響を受けて、日本からの輸入貨物に制限を掛けている場合があります。

仕向地が規制対象になっている場合は、輸出できる産地であることや安全を証明する輸出証明書が必要なので、あらかじめ確認しておきましょう。

輸出相手国ごとの注意点

2020年の日本酒(清酒)の輸出総額は約241億円(前年比 3.1%増)です。日本酒の輸出総額ならびに輸出単価は、2010年から11年連続で過去最高記録を更新しています。

日本酒が輸出されている上位4ヶ国である香港、中国、アメリカ、台湾に輸出する際の注意点を解説しましょう。

香港の場合

香港向けの酒類は、ラベルに製品名やアルコール度数のほかにも、製造者名あるいは包装業者名と住所、賞味期限を記載する必要があります。

また、アルコール度数30%を超える酒類の輸出は、あらかじめ香港税関に輸入ライセンス(Import License)の申請をして取得しておくことが必要です。

香港では関税は掛からないものの、物品税の対象になるケースがあります。アルコール度数30%以下の場合は免税ですが、30%以上の場合は100%と極端な差があるので要注意です。

中国の場合

中国では酒類の輸入を、さまざまな法律で細かく規制しています。例を挙げれば、添加物は化学名まで詳しく記載し、ラベルに賞味期限と製造年月日の両方を明記することなどです。

中国側が定める品質基準に合致しないと輸入できないか、あるいは検査を受ける必要があるので、あらかじめ詳細を確認しておきましょう。

アメリカの場合

アメリカ向けの酒類には、ラベルに商品名や度数、内容量のほかにも、着色料名や原産国名、輸入者名と住所などを記載する必要があります。誤解を招くような表記を避ける配慮も必要です。

また、連邦酒税以外に州酒税、港湾維持料など、輸入するエリア独自の徴収もあります。そのため、最終的なコストを前もって試算しておくのが賢明です。

台湾の場合

台湾向けの酒類は、ラベルに商品名やアルコール度数、製造業者名、製造年月日、賞味期限などを中国語で記載する必要があります。また、台湾政府の財政部に輸入許可を申請して取得しておくことが必要です。

酒類輸入には衛生基準があり、二酸化硫黄、鉛、メタノールなどの最大許容量が定められています。それをクリアしていれば、検査後に輸入許可が下りるでしょう。

なお、世界の日本酒マーケットの事情や国別の輸出額ランキングについては、以下の記事で特集しています。ぜひ参考にご覧ください。

日本酒の国別輸出額ランキング!海外マーケット事情と商談ポイントも解説

参考

https://shuruihanbai.com/oroshi/youken/
https://www.nta.go.jp/about/council/sake3/201125/shiryo/pdf/02.pdf
https://katsujim.info/chigai.html
https://net-kaigyou.com/sake/support3/
http://osake919.com/yusyutsunyuu/
https://sake-office.com/sake-services/yusyutsusyurui.html
https://sake-office.com/yushutsu-shurui-oroshi.html
https://worldship-search.com/liquor-export/
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sake/01.pdf

まとめ

海外の日本酒ブームは今後も盛り上がっていきそうです。酒類の流通に携わるみなさんにとって、有望な新しい流通チャネルとしてトライする価値があるのではないでしょうか。

国内および輸出相手国のライセンス取得の必要などはありますが、細かい手続きはフォワーダーに依頼すれば心配ありません。ただし、日本酒は品質管理が生命線なので、くれぐれも品質保持ができる輸送方法を選びましょう。

弊社は、国際混載輸送業に特化したLCL CARRIERです。冷凍・冷蔵コンテナ(リーファーコンテナ)を使用し、日本酒の品質を損なわずに海外へ輸送できます。

コンテナ1本に満たない量の日本酒を輸出する場合には、容積に応じたコストで混載し、安全に輸送ができる弊社の冷蔵・冷凍混載サービスがお力になれるでしょう。ぜひお気軽にお声掛けください。

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